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【業務可視化ツール活用事例】 横河電機株式会社様/株式会社ワイ・ディ・シー様 2017-06-26T11:47:15+00:00

Project Description

影響範囲を容易に把握し、ミスや漏れのない設計開発環境を実現。ワイ・ディ・シーのビジネスパートナーとしてプロジェクトに参画。
ー 設計アーキテクチャ可視化ツール「iDFC」が設計開発業務のプロセス改革に貢献 ー

計測・制御・情報をコア技術として、産業界の発展と人々の豊かな暮らしの実現に貢献する横河電機株式会社(以下、横河電機)。同社では、株式会社ワイ・ディ・シー(以下、ワイ・ディ・シー)が提唱する方法論(※1)に基づく「開発プロセス改革プロジェクト」を実施した。

そのプロジェクトの中で、ワイ・ディ・シーとサン・プラニング・システムズが共同で開発した設計アーキテクチャ可視化ツール「iDFC」が重要な役割を担ったという。 その詳細について、プロジェクトの主要メンバーに詳しく話を伺った。

(※1)製造業の業務プロセスを改革する、ワイ・ディ・シーが開発した方法論。

横河電機株式会社

■本社所在地: 東京都武蔵野市中町2-9-32
■設立: 1920年12月1日(創立:1915年 9月1日)
■資本金: 434億105万円
■従業員数: (個別)2,958名、(連結)19,837名(2014年3月期)
■事業概要: 【制御事業】各種プラントの生産設備の制御・運転監視を行う分散形制御システムおよび現場センサ機器の開発・製造・販売、【計測機器事業】電力、電圧、電流、光などを計測する基本測定器や波形測定器、光通信測定器 等の開発・製造・販売、共焦点スキャナ、創薬支援システムの開発・製造・販売、【その他事業】航空機用計器の開発・製造・販売

株式会社ワイ・ディ・シー

■本社所在地: 東京都府中市府中町1-9 京王府中1丁目ビル
■設立: 2000年1月(創業:1972年3月)
■資本金: 2億5000万円
■従業員数: 286名(2014年4月1日現在)
■事業概要: 情報通信システムに関するコンサルティングおよび設計、開発、機器およびソフトウェアのライセンス販売、インストール、保守、運用 サポート

 

もくじ
  1. 設計開発業務におけるプロセス改革を実践
  2. 設計開発領域における5つの課題
  3. 設計アーキテクチャの可視化専用ツール「iDFC」
  4. フローチャートを作成しながら機能検討図と機能相関図を同期
  5. 影響範囲を容易に把握し、ミスや洩れのない設計開発環境を実現
  6. 若手を育てる人材育成サイクルを確立
  7. 今後の展開

設計開発業務におけるプロセス改革を実践

– 今回、サン・プラニング・システムズが参画したプロジェクトの概要について教えてください。

電磁流量計 ADMAG AXFシリーズ(写真提供:横河電機株式会社)

電磁流量計 ADMAG AXFシリーズ(写真提供:横河電機株式会社)

今回のプロジェクトは、ワイ・ディ・シーが提唱する「製造業の業務プロセス改革」を、横河電機における「電磁流量計」の開発現場において実践した取り組みです。

改革の方向性は、製造業が抱える設計開発プロセスの課題に対して、中長期的な視点から付加価値の創出をめざすもので、競合製品との差別化を図ることも大きな目的の1つとなります。

また、単に設計アーキテクチャを可視化するのではなく、事業計画や人員配置といったマネジメント視点と、機能ニーズや改善ニーズといったプロダクト視点との相関関係を紐解いていくことで、利益や売上の向上、さらには開発コスト低減といった事業全体における成果をめざすアプローチでもあります。

設計開発領域における5つの必要性

横河電機株式会社 高橋氏

「開発プロセス改革プロジェクト は、設計開発領域における課題 解決を目指した取り組みの1つ です」(高橋氏)

– 「開発プロセス改革プロジェクト」に取り組むことになった背景を教えてください。

横河電機に限らず、グローバルな競争環境にさらされる国内の製造業は、すでにオペレーションの効率化だけでは中国・韓国をはじめとする新興国に対して、競争優位性を保つことが難しくなってきました。

そのため、数多くの企業が経営資源を情報化して顧客の付加価値を高めるべくプロセスの全体最適化に取り組んでいます。しかし、設計開発領域では次のような必要性を認識していました。

(1)お客様のニーズにより合った製品を提供したい
(2)新製品をよりスピーディに開発したい
(3)手戻りをなくし、試作依存体質を変え開発コストをより削減したい
(4)技術伝承を促進し、ベテラン頼みの開発から脱却したい
(5)技術者の流動性を高め、シナジー効果を出せる開発環境を実現したい

「開発プロセス改革プロジェクト」は、このような課題の解決を目指した取り組みの1つです。

 

– それぞれの必要性について解説してください。まずは「(1)お客様のニーズにより合った製品を提供したい」からお願いします。

設計開発の領域において技術継承が行われていないため、ベテラン設計者がプロジェクト全体に深く関わらなければならず、付加価値を醸成する新規技術の開発に集中して取り組めない、もしくは取り組む時間が取れない状況が続き、お客様のニーズを満たす新製品を開発することが難しくなっています。

 

では次に「(2)新製品をよりスピーディに開発したい」という必要性について教えてください。

これも技術伝承ができていないことが原因の1つとなっていますが、若手の開発者が設計をする際、既存の技術や設計に関する調査に時間と手間を取られることが要因となっています。ベテランであれば、経験やノウハウがあるので直感的に理解できるようなことも、経験のない若手にとっては未知の領域です。また、ベテランの有識者に詳細な情報を聞きたいと思っても、誰に聞けばいいのかわからない、もしくは聞いてもうまく互いにコミュニケーションが取れないということもあります。

 

– 続いて、「(3)手戻りをなくし、試作依存体質を変え開発コストをより削減したい」という点について教えてください。

これらを解決するためには、設計段階で事前にIT技術を活用してシミュレーションをしたり、想定事項を盛り込んだりするフロントローディングの実践が有効です。

しかし、若手技術者のみならずベテラン技術者であっても、設計段階で設計や仕様の変更や追加による影響範囲をすべて調査・把握することは容易ではなく、結局はスケジュールに追われ、試作依存型から脱出できず、さまざまな手戻りが発生し、「(2)新製品をよりスピーディに開発したい」の要因の1つともなっています。

 

– 新製品の開発の遅れや手戻りの発生には、根本的に「(4)技術伝承を促進し、ベテラン頼みの開発から脱却したい」という必要性とも関連がありそうですね。

その通りです。ベテラン頼みの開発は、若手の育成を阻害する要因となり、将来的にベテランが引退したときに空洞化を招くことにもつながります。一方、ベテラン側にも技術を伝承したいという意思がないわけではなく、日々の開発業務に追われる中、「どう伝えていけばいいのかわからない」という現実もあり、この問題は深刻です。

 

– 最後の「(5)技術者の流動性を高め、シナジー効果を出せる開発環境を実現したい」という点についてもお願いします。

技術を伝承したり情報を共有したりする仕組みが確立されていないため、設計開発者個人のスキルに依存する部分が多く、自分の得意分野以外の技術に関して技術力を高める環境や仕組みもないのが現状です。そのため、人材の流動性がなく、新しい価値を生み出すシナジー効果を発揮する場面を作り出すことは容易ではありません。結果として、そのような状況が、競争力を持った新製品が生まれにくい要因となっています。

設計アーキテクチャの可視化専用ツール「iDFC」

– 「開発プロセス改革プロジェクト」におけるサン・プラニング・システムズの役割について教えてください。

株式会社ワイ・ディ・シー 團野氏

「サン・プラニング・システムズ
には、『iDFC』の開発を担当
してもらいました」(團野氏)

サン・プラニング・システムズには、「設計アーキテクチャを可視化」するための専用ツールである「iDFC」の開発を担当してもらいました。

「iDFC」は、「開発プロセス改革プロジェクト」に欠かせない設計アーキテクチャの可視化および関連ドキュメントを効率的に管理するためのツールです。業務フロー作成ツール「iGrafx FlowCharter」をベースに、必要な機能をカスタマイズして専用ツールとして新たに開発をしてもらいました。

 

– なぜ、専用のツールを新たに開発する必要があったのでしょうか。

「設計アーキテクチャの可視化」を具体的に説明すると、「機能検討図」、「機能相関図」、「設計アーキテクチャ」という3つのドキュメントを作成し、同期して管理することになります。

しかし、これまでは手軽に利用でき、必要な機能を網羅したツールがなかったので、表計算ソフトを使ってドキュメントを作成し、管理してきました。

表計算ソフトを使った場合、3つのドキュメントの同期を管理するのが困難で、フローチャートの作成や変更にも手間と時間がかかっていました。しかも、そのような状況では、忙しい現場の設計開発者に使ってもらうことが難しく、業務プロセス改革を推し進めていく上での障壁ともなっており、「iDFC」を開発するに至りました。

 

– 専用ツールの開発をサン・プラニング・システムズに依頼することになった経緯を教えてください。

このようなツールをゼロから開発することは、コスト面での負担も大きく、現実的な選択ではありませんでした。そこで、 設計アーキテクチャを可視化するツールとしてさまざまなツールやシステムを検討する中で、「iGrafx FlowCharter」に注目したことが「iDFC」を開発するきっかけとなりました。

「iGrafx FlowCharter」は、フローチャートを直感的に作成・変更でき、各エレメント(設計図を記述するにおいて必要な部品や条件などの要素)に関連ドキュメントを結びつけて管理できるので、求めていた理想的なツールに限りなく近い存在でした。しかし、標準機能のままでは、各エレメントの関係性を示すラインの重み付けやエレメントの種類による色分けが難しいなど、運用でカバーしなければならない部分がありました。

運用でカバーする使い方だと、ローカルルールができて全体としての整合性が取れなくなり、利用者への負担や使いにくさにつながることにもなります。そこで、カスタマイズをお願いしたところ、単にツールを開発・提供するだけでなく、今後、業務プロセス改革のソリューションを広げていくビジネスパートナーとして協力したいという申し出もあり、専用ツールとして「iDFC」を開発してもらうことになりました。

 

– カスタマイズをした機能について教えてください。

主なカスタマイズの内容は、次の通りです。

 カスタマイズ内容  説明
 基本的な拡張 使用する図形および登録するデータの種類をiDFC用に変更
 エレメント一覧表出力取込機能 iDFC用にカスタマイズした項目を表計算ソフトに出力する機能。表計算ソフトからiDFCに取り込む機能。
 エレメント図形の分類別書式設定 エレメントに対して分類を設定し、その分類ごとに書式を一括設定する機能
 分類別強調機能 エレメント図形を分類別に強調表示する機能
 エレメント図形接続線の強調機能 任意のエレメント図形の接続線を強調表示する機能
 接続線自動重複回避処理 図形と図形を接続する接続線を自動的に重複しないように接続辺の幅に対して均等配置する機能

フローチャートを作成しながら機能検討図と機能相関図を同期

– 「iDFC」は、具体的にどのように利用しているのでしょうか。

横河電機株式会社 野中氏

「思いつくままにフローチャート
を書くことができます」(野中氏)

既存の設計エレメントを書き起こす際は、頭の中でイメージしているフローチャートを「iDFC」上で直接、書いていきます。

「iDFC」ではエレメントの追加や関連づけの修正なども容易なので、シーケンシャルに順序よくフローチャートを設計する必要がなく、自由に書き始めて調整をしながら仕上げていくことが可能です。

また、フローチャートを書きながら、関連する技術情報や根拠、計算ツールなどの情報を追加し、「機能検討図」や「機能相関図」と同期を設定していきます。

新しく設計を行う場合なら、「iDFC」上で「設計アーキテクチャ」を作成することで、仕様や特定の仕様変更時の波及項目を再検討しやすくなります。また、要求事項に対して新技術の開発が必要なのかも迅速に判断できます。

書き起こし作業のイメージ

書き起こし作業のイメージ

新設計スタイルのイメージ

新設計スタイルのイメージ

影響範囲を容易に把握し、ミスや洩れのない設計開発環境を実現

– 「iDFC」の導入効果について教えてください。

横河電機株式会社 矢島氏

「ベテランと若手の距離感が
縮まりました」(矢島氏)

「iDFC」を導入した効果は、主に次の4つです。

【効果1】設計アーキテクチャ可視化作業の効率化

表計算ソフトでフローチャートを書いていたときは、修正が面倒なので事前にフローチャートの設計も必要でした。しかし、「iDFC」ではフローチャートを直感的に作成でき、修正も容易なので効率的に設計アーキテクチャを作成・修正することができました。

【効果2】設計開発の迅速化とミスや洩れを防止する基盤の確立

設計開発時に必要な情報や影響範囲を、「iDFC」上で容易かつ確実に把握できるようになり、若手でも容易に根拠を含む技術文書やツールを活用し、ミスや洩れのない迅速な設計開発ができるようになりました。同時に、手戻りも最小限に削減できました。

その結果、これまでの「試作依存型」から「設計解決型」へ開発スタイルの変革を図り、将来的にはお客様のニーズに合った製品を生み出す「企画主導型」への道筋を確立できました。

【効果3】ベテラン有識者をサポート役に回すことができた

通常は、ベテラン有識者に設計エレメントを書き起こしてもらったり、有識者の話を聞いて書き起こしたりするのですが、今回は、「iDFC」上で容易に追加・修正が可能なので、若手を中心に可視化作業を進めました。

そのことにより、若手が自らこれまでの設計開発を疑似体験することができ、ベテランからの押しつけではなく、若手からのニーズに沿った技術伝承ができました。同時に、ベテラン有識者の作業負荷を最小限に抑え、コア業務である設計開発への影響を最小限に抑えることもできました。

【効果4】ベテランと若手の意識改革

「iDFC」で設計アーキテクチャが可視化されたことで、ベテランと若手、互いの共通認識が深まり会話もスムーズになりました。また、若手を中心にフローチャートをベースとした成果物ができあがったことで、ベテランは若手を認め、若手もベテランの実績を目の当たりにし、互いに認め合えるようになり、両者の意識が良い方向へと変わりつつあると感じています。

若手を育てる人材育成サイクルを確立

– 「開発プロセス改革プロジェクト」の成果についても教えてください

プロジェクトの成果は技術情報可視化や構造化といったゴールの達成度を定性的に測る「先行指標」と、製品利益や売上の向上や開発コスト低減といった事業レベルの成果を定量的に極める「事業効果」とに分けて捉えています。

「事業効果」に関しては長期的な視野で評価する必要があり、今後、定期的に効果指標(KPI)を監視していく必要があります。

一方、「先行指標」に関しては、電磁流量計に関する数百の設計エレメントおよびタスクを作成したことで、現状の把握はもちろん、機能の関連性や影響関係といった設計情報が可視化されることで、議論の土台ができ、設計のブラッシュアップや過去の設計情報の引き継ぎなどの議論やコミュニケーションが活性化できました。

具体的には、上長が見ても明らかに若手の業務への理解が進んでいることがわかるようになったことをはじめ、本プロジェクトを行っていない他部署と比べて明らかに業務の継承ができている点や、業務の継承に関しては定量的な可視化を行わなくても明らかなほどに結果が出ていることが挙げられます。

また、「現状」や「関連性や影響範囲」の可視化は、技術継承における大きな成果だと捉えています。これまで調査や確認など時間がかかっていた作業が、迅速かつ漏れなくできるようになりました。仕様や要件の変更に対しても柔軟に対応できるようになりました。

開発体制に関しても、設計アーキテクチャが可視化されたことで、安心して既存技術は若手に任せて、高い付加価値を生み出す新規開発はベテラン有識者に集中して取り組んでもらう開発体制を確立できました。このような体制で若手が経験を積み重ねていくことができますので、将来的に今の若手がベテランとなったとき、新規開発を担当できるようになるという人材育成のサイクルも確立することができました。

今後の展開

– 今後の展開について予定などがあれば教えてください。

「開発プロセス改革プロジェクト」の適用範囲は電磁流量計の開発に限定するものではなく、横河電機におけるさまざまな製品を対象とした開発プロセス改革を目指した取り組みです。

今回の実績を踏まえ、プロジェクト自体をブラッシュアップさせていくと同時に、スムーズに横展開を図っていくことも、今後の課題であり、新たなミッションとなります。

 

– サン・プラニング・システムズへの評価と期待を教えてください。

今回、専用のツールを開発してもらうにあたり、私たちとしても期待は大きく、妥協はしませんでした。その分、高度な要求となった部分もあるかもしれません。そのような状況でも、迅速かつ的確に対応してくれたサン・プラニング・システムズには大変感謝しています。

また、随所で可視化のプロフェッショナルならではのアドバイスや提案をしてもらったことが、プロジェクトの価値を高めることにつながりました。

今後も、ビジネスパートナーとして、「iDFC」の提供を通じて、横河電機ならびにワイ・ディ・シーを後方支援していただければと思っています。今後ともよろしくお願いします。

お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

 

横河電機様 ワイ・ディ・シー様

横河電機株式会社 IAプラットフォーム事業本部 共通技術開発センター 技術推進部 部長 高橋 雅彦氏(右端)
横河電機株式会社 IAプラットフォーム事業本部 グローバル開発センター センサー技術部 矢島 由美子氏(左から2番目)
横河電機株式会社 IAプラットフォーム事業本部 グローバル開発センター センサー技術部 野中 雅允氏(右から2番目)
株式会社ワイ・ディ・シー 共動創発事業本部 創発推進部 團野 晃氏(左端)

* 取材日時 2015年2月
* 横河電機のサイト、ワイ・ディ・シーのサイト
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です